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変形性膝関節症・股関節症に運動療法が効く!科学が証明した運動療法の驚くべき効果
【運動療法のすすめ】変形性関節症に効く理由とその全身的効果
変形性膝関節症や股関節症(以下、OA)は、世界的に多くの人が悩む慢性疾患のひとつです。関節の痛みや動きの悪さなどの症状により、日常生活に大きな影響を及ぼします。こうしたOAの症状を和らげ、さらに全身の健康にも良い影響を与える方法として注目されているのが「運動療法」です。
この記事では、最新の研究に基づき、運動療法がOAに与える効果をわかりやすく解説します。
【症状の改善だけじゃない!運動療法の効果】
運動療法とは、関節の痛みを軽減し、動作の機能を回復させることを目的とした、計画的かつ個別に行う身体運動のことです。特にOA患者にとっては、安全で効果的な治療法とされています。
研究によれば、運動療法はNSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)と同等以上に痛みを和らげ、アセトアミノフェン(解熱鎮痛剤)の2〜3倍の効果があるとされています。しかも、副作用のリスクが少ないという利点もあります。
運動には「有酸素運動」「筋力強化運動」「動作訓練」「神経筋トレーニング」などがあり、それぞれにメリットがあります。たとえば筋力が弱い人には筋トレが有効で、関節の安定性が低い人には神経筋トレーニングが適しています。
さらに、水中運動は、体重の負担が軽減されるため、関節に強い痛みがある人にとっても実行しやすい方法です。
【具体的な運動方法】
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有酸素運動:歩行、水中エクササイズ、自転車エルゴメーターなど、心肺機能を高める運動です。体重過多の方や膝の負担を減らしたい方には、水中での有酸素運動が特に推奨されます。
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筋力強化運動:特に太もも前面の大腿四頭筋の強化が重要であり、レッグエクステンションやスクワットが効果的です。筋肉を鍛えることで、関節の安定性が向上します。
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神経筋トレーニング:関節の安定性や動作の協調性を高める訓練です。GLA:D(Good Life with osteoArthritis in Denmark)プログラムに基づいたバランス訓練や姿勢制御のエクササイズが含まれます。
GLA:Dプログラムでは、週2回・計12回以上の神経筋エクササイズを行うほか、2回のグループ教育を通じてOAの理解と自己管理を促進します。さらに、痛みや機能の評価などのデータを継続的に収集し、プログラムの効果をフィードバックする仕組みも整っています。
これらの運動は、理学療法士などの専門家の指導のもとで、個々の状態に合わせて組み合わせるのが効果的です。整形外科の外来でも、診察時に運動療法の指導や専門の理学療法士への紹介が行われています。特に、保存療法を選択する患者に対しては、運動療法の導入が初期治療として強く推奨されており、多くの整形外科医が積極的に運動指導を行っています。
【運動の継続がもたらす全身への恩恵】
OA患者の多くは、推奨されている身体活動量(週150分の中強度運動)を満たしていません。しかし、運動を継続することで得られる効果は、関節症状の改善にとどまりません。
たとえば、運動には抗炎症作用があり、糖尿病や心血管疾患、認知症などの慢性疾患を予防・改善する効果もあるのです。OA患者の多くはこうした併存疾患を持っており、運動によってそれらのリスクを下げることができます。
具体的には、運動によりインスリン感受性が向上し、心臓や血管の機能が改善し、脳の健康にも良い影響が及ぶことが示されています。また、体重減少にもつながり、関節への負担が軽減されるのも大きな利点です。
【運動を続けるためのコツと注意点】
効果を得るには、運動を継続することが欠かせません。初めの6〜12週間は、週に2回以上の専門家による指導を受けることが推奨されており、その後も自宅での自主トレーニングや、数か月ごとのブースターセッション(再指導)を受けると効果が長続きします。
また、運動によって一時的に痛みが増すことがありますが、これは必ずしも悪い兆候ではありません。痛みが24時間以内に元に戻るようであれば、運動は続けても問題ないとされています。
重要なのは、患者自身が運動の目的や痛みとの付き合い方について正しく理解することです。患者教育を通じて「なぜ運動が必要なのか」「どうすれば無理なく続けられるのか」を知ることが、長期的な改善につながります。
特に高齢者や体重過多の方では、無理な運動は避ける必要があります。水中運動や、痛みの少ない部位の運動など、負担を軽減した方法から始めましょう。
【まとめ】
OAの治療には、薬や手術だけでなく、運動療法という選択肢があります。痛みや可動域の改善にとどまらず、糖尿病や心臓病、認知症といった慢性疾患の予防・改善にもつながるため、非常に価値の高い治療法といえます。
正しい知識と適切なサポートのもとで、運動を日常に取り入れることは、OAとともにより良く生きるための第一歩です。
【参考論文】
Skou St et al.Physical Activity and Exercise Therapy Benefit More Than Just Symptoms and Impairments in People With Hip and Knee Osteoarthritis」(J Orthop Sports Phys Ther. 2018;48(6):439-447.
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